2018年11月24日 (土)

サイエンスカフェかごしま特別編「今年のノーベル賞受賞研究をひも解いてみよう!」

話し手:新留康郎(鹿児島大学理学部)、加藤太一郎(鹿児島大学理学部)、飯笹英一(鹿児島大学医歯学総合研究科)

開催場所:Brains Studio

参加人数:17名

 今回は、ノーベル賞受賞研究をひも解いてみよう!という事で、物理学賞の研究を新留康郎さん、化学賞の研究を加藤太一郎さん、医学生理学賞の研究を飯笹英一さんが.それぞれひも解いて下さいました。

 まず、物理学賞の受賞対象となった光ピンセットですが、実は新留さんも自作した光ピンセットをご自身の研究に使われているそうで、難しい原理をピンポン玉とドライヤーを用いた実験で分かりやすく説明して下さいました。もう1つの受賞対象となった高強度超短パルス光の生成も、何のことか専門外の者には意味不明でしたが、普通の光は1秒間に30万 kmも進むのに対し、この超短パルス光はなんと1秒間に3 µmしか進まない非常に短いパルスを持つ光で、非常に高いエネルギーを持つことから、硬いもののレーザー加工に使われているそうです。

 続いて、化学賞の受賞対象となったタンパク質の人為的な進化という研究では、アーノルド博士という女性科学者が受賞しますが、ノーベル賞を受賞した女性科学者はかなり少なく、化学賞に限って言えば、彼女で5人目だという事です。アーノルド博士は、公害などをもたらした薬品による化学反応と異なり、熱や有害な副産物を産生しない、生物がもつ酵素というタンパク質を産業利用することを考えました。しかし、天然に存在する酵素は産業利用するには性能が低いため、彼女は目的の性質を高めるためにタンパク質を人為的に進化させる方法を編み出しました。洗剤に含まれている汚れを落とすための酵素もこの方法を用いて改良されたもので、水温が低く、石鹸(界面活性剤)があり、普通の酵素が働きにくい洗濯機の中でも利用できるようになったそうです。もう1つ、別のお二方が受賞対象となったファージディスプレイは、ファージと呼ばれるウイルスの仲間の特性を上手く利用してタンパク質を進化させる方法で、加藤さんもご自身の研究で使われているそうです。この方法を使って薬として使われる抗体などのタンパク質をヒトの体に合う形に進化されているそうです。

 最後に、医学賞の受賞対象となったがんの治療法ですが、これは免疫が暴走して自分を攻撃してしまわないように働いているブレーキを抗体でブロックすることで、がんへの攻撃力を高める方法らしいです。遺伝子に変異が入ったがんは自分であるけれども異物として免疫に攻撃されるそうです。しかし、その反面、ブレーキ分子のPD-1やCTLA4を細胞の表面に出したり、抗原とよばれる免疫が攻撃する目印になる物質を無くした免疫に排除されづらい進化したがんを免疫は作り出してしまうそうです。そこで、PD-1やCTLA4を出しているがんには今回の受賞対象となった治療法が有効らしいです。今後はゲノム診療と呼ばれるがんのDNA配列を解読して有効な治療法を見つけ出す診療方法が一般的になると考えられ、そこで変異が多く見つかった場合は、元々免疫に認識攻撃されやすかった可能性があり、それに対して特に有効な治療法になるだろうと飯笹さんは将来の展望を語っておられました。

 行楽シーズンの3連休の中日の数あるイベントの中から、サイエンスカフェかごしまを選んで参加して下さった方々どうもありがとうございました!

物理学賞について解説する新留さん(上)。今回はノーベル賞の授賞式で出されるセーブルブレンドの紅茶を提供して頂きました(下)。お供には、Merry Annのパウンドケーキ、どちらもとても美味しかったです(下)。

化学賞の解説をする加藤さん。

医学賞について解説する飯笹さん。